えるぼし認定(厚生労働省)の基準・マーク申請方法|企業一覧から見えるメリット
『女性活躍』が叫ばれる今、国が”女性の活躍推進が優良な企業である”と認めるマークがあります。
それが「えるぼし」認定。
女性が活躍している企業には、採用・雇用面でもメリットがありそうですよね。
今回は、その「えるぼし」の認定基準や、そもそも『女性活躍』が叫ばれている背景についても探っていきたいと思います。
えるぼし認定(マーク)とは?
2016年に女性活躍推進法が施行され、その法律に基づいた認定制度として「えるぼし」認定が登場しました。
女性活躍推進法とは、正式には「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」と言い、「働く(もしくは働く意思のある)女性の活躍を推進します」という法律です。
この女性活躍推進法に基づき、国・地方公共団体、301人以上の大企業は、
(1)自社の女性の活躍に関する状況把握・課題分析
(2)その課題を解決するのにふさわしい数値目標と取組を盛り込んだ行動計画の策定・届出・周知・公表
(3)自社の女性の活躍に関する情報の公表
を行わなければなりません。(300人以下の中小企業は努力義務)
そして、この行動計画の届出を行い、女性の活躍推進に関する取組の実施状況が優良な企業は、申請すれば厚生労働大臣から「えるぼし」認定を受けることができるのです。
女性活躍が叫ばれる背景とは?
でも、なぜ今『女性活躍』が叫ばれているのでしょうか?
総務省「人口推計」より、日本の人口は近年横ばいであり、今後減少していくと予測されています。
2060年には総人口が9,000万人を割り込み、高齢化率は40%近い水準へ!
つまり、簡単にいうと「人手不足」!
もっというと、「労働力が全然足りない」!!
そんな中で『女性活躍』が謳われるようになったのには理由があります。
いわゆる「M字カーブ」と言われる20代・30代の女性が出産・育児により家庭に入ることで、労働人口が減ってしまう減少があったのですが、通常働き盛り世代である20代・30代の女性が働きやすい環境を作ることで、人手不足を補おうというものです。
この働きかけにより、平成30年度のデータでは「M字カーブ」も浅くなってきました。
けれども、まだまだ「出産・育児のため」に求職していない女性の非労働力人口は多く存在するのです。
将来の労働力不足の懸念、ニーズの多様化やグローバル化の対応のためには、人材の多様性(ダイバーシティ)が不可欠!そこで、女性の活躍推進は重要と考えられています。
また、企業としても人を採用するにはかなりのコストがかかっています。
その中で、女性が出産・育児で離職してしまうよりも、継続して働いてくれる方がメリットが高いのです。
企業側が「女性が働きやすいですよ」とどんどん制度を拡充していけば、生産力向上につながっていくはず!
女性が働きやすい環境のある企業が増えるということは、つまり「えるぼし」認定企業が増えていくという構図になりそうです。
厚生労働省が定める「えるぼし」認定基準
「女性の活躍を推進する」企業であることを認定する「えるぼし」ですが、どんなハードルをクリアすればいいのでしょうか。
まずは概要から順を追って見ていきましょう!
■認定とは
●行動計画の策定、策定した旨の届出を行った事業主のうち、女性の活躍推進に関する状況等が優良な事業主は、都道府県労働局への申請により、厚生労働大臣の認定を受けることができます。
●認定を受けた事業主は、厚生労働大臣が定める認定マークを商品や広告などに付すことができ、女性活躍推進事業主であることをPRすることができ、優秀な人材の確保や企業イメージの向上等につながることが期待できます。
(「えるぼし」認定パンフレットより)
■認定基準
認定基準となる項目は全部で5項目。
その中で、企業が満たす項目数に応じて、取得できる認定段階が決まります。
(「えるぼし」認定には3段階目まであり、3つ星が最高ランクとなります)
【評価項目1】男女別の採用における競争倍率が同程度
【評価項目2】男女別の継続就業が同程度
【評価項目3】労働時間等の働き方
【評価項目4】管理職に占める女性労働者の割合
【評価項目5】多様なキャリアコースが設けられていること
この5つの基準のうち
・1つ又は2つをクリア → 1段階目
・3つ又は4つをクリア → 2段階目
・5つ全てをクリア → 3段階目
なお、クリアした実績は厚生労働省のウェブサイトに毎年公表する必要があります。
満たさない項目がある場合には、改善実績も必要に!
そのほかにも細かい基準などあるのですが、概要をご紹介しました。
私が所属する企業でも、「えるぼし(3つ星)」認定を受けたのですが、その際に思ったことは、『女性活躍』という名称ではありますが、認定基準の計算方法は”男女同程度”であるかどうかがポイントになります。
女性が働きづらい環境になっていないかどうか、男性と同じように活躍する機会が提供されているのか、というところを、どの程度企業が把握し取り組んでいるかが浮き彫りになります。
”女性を優遇しよう”というよりも”女性も男性も性別等関係なく活躍できる”ための制度だと感じました。
詳しくは、ぜひ既出のパンフレットをご確認ください。
■「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」に基づく認定を取得しましょう!
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000483387.pdf
■女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に基づく一般事業主行動計画を策定しましょう!!
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000483386.pdf
えるぼし認定の申請方法と気をつけたいポイント
さて、実際に認定基準もクリアし、「えるぼし」の申請を行う段階にきたご担当者様、おめでとうございます!
ここまで本当に大変だったと思います。
もう少し!・・・と言いたいところですが、ここからがもっと重要です。
申請手続を行った私の経験から申し上げると、都道府県労働局との密な連携がとても重要になってきます。
と言っても、政治的なものとか、袖の下(絶対ダメですよ!もちろん受け取らないと思いますが)等ではなく、「認識合わせ」がとても重要になります。
例えば、【評価項目4:管理職比率】での「管理職」の定義です。
企業によって、役職などの呼称は大きく異なります。
その際に、「企業側の認識」と「認定基準での認識」がズレてしまう場合があります。
もちろんパンフレット等にも詳細に記載があるのですが、実際に会社の組織図を見ていただいた方が共通認識も持ちやすく、また、労働局の皆さんはとても熱心に丁寧に教えてくださいます。
また、「いざ、申請しよう!」と思ってからかなりの時間を要することもあるので、年明けでの準備はあまりオススメしません。(もちろん労働局にも確認してみてくださいね)
事業年度が変わると、再度計算のし直しが必要になるかもしれないのです。
そう!
つまり、申請を受理していただく側にしっかりヒアリングする!という意味での『労働局との密な連携』が重要になってくるのです。
ちなみに、私は毎週のように労働局に通っていました。
その度に気づかされる部分もありとても勉強になりましたし、制度についての理解も深まりました。
まずは、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に相談してみるのはいかがでしょう。
えるぼしとくるみんマークの違い、認定メリット
『女性活躍』という言葉から、認定マークとして「くるみんマーク」を想起される方も多いですが、実は大きく異なります。
どちらも厚生労働大臣が定める認定マークなのですが、どこが違うのでしょう?
「くるみんマーク」は、次世代育成支援対策推進法に基づく施策であり、”子育てサポート”企業としての認定。
「えるぼし」認定は、女性活躍推進法に基づく施策であり、”女性活躍推進”企業としての認定。
実は、基準となる法律も違うのです。
とは言え、どちらも男女が同等に企業でも育児でも活躍できるように、制度の整備が行われていると言えるのではないでしょうか。
えるぼし認定企業一覧から見える女性活躍の事例
平成31年3月末時点での、「えるぼし」認定企業数は認定段階1〜3まで合計で、837社となります。
同時点での一般事業主行動計画届出企業数が、22,450社(常用雇用労働者300人以下の企業含む)となるので、えるぼし認定企業は全体の3.7%となります。
「くるみんマーク」の認定率が4.7%なので、それよりもハードルが高いと言えます。
「えるぼし」認定企業一覧は、厚生労働省のサイトからダウンロードすることができるのですが、大企業だけではなく少人数の企業も取得していることが見えてきます。
■「えるぼし」認定状況
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000129028.html
厚生労働省のサイトには業種別の好事例も紹介されているので、ぜひチェックしてくださいね。
私の所属する企業でも、女性活躍推進プロジェクトを立ち上げ、次代の管理職を育てる1on1面談や研修の実施、多様なキャリアコースを進んできた女性社員の声の公開などの取組を実施しています。
現状を把握し社内のニーズを探ることや、経営層への意識共有はとても重要です。
「自分がどんな企業だったら長く働き続けたいか」を社員に考えてもらう機会があれば、自ずと道は開けるのではないでしょうか。
女性だけではなく、男性も「働き続けたい」と思える職場作りの第一歩に「えるぼし」を活用してみませんか?