児童福祉法改正2020年(令和2年)4月施行で体罰禁止へ!しつけの定義とは?
2020年(令和2年)4月1日に施行された法律はかなりあるのですが、子育てに関する施行もありました。
2019年(令和元年)6月に児童福祉法等改正法が成立したことで、親(親権者等)は、児童への「しつけ」に体罰を加えてはならないことが法定化され、この4月から施行されたんですよね。
幼い子どもを衰弱死させたり暴行を加えたりしたとき、逮捕された親族が「しつけのため」と供述するケースが後を絶たず、「しつけとは?」「体罰の定義とは?」というのを改めて見直そうということで決定したんですね。
“自分ではしつけと思っていた"
もしかしたらそんな思いで、子供たちの体と心にキズを負わせてしまっていることがあるかもしれません。
今回は新型コロナウイルスの影響で、自宅で長い時間子どもと一緒に過ごすことも増えた家庭も多いと思うので、「児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律」について紹介していきます。
体罰とは?大人の約6割が「たたく」ことを容認
子ども支援専門の国際NGOである公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが2017年に全国2万人の大人を対象としたアンケートによると、約6割の大人が「しつけのためによる体罰・たたくこと」を容認している結果がありました。
「決してすべきではない」という回答者の中でも、怒鳴りつける・にらみつけるなどのこころを傷つける罰については、一定数容認する人がいたという結果も。
正直いって、二人の子どものいる私も、ゆとりがないときは特に大きな声を出してしまうことがあるので反省する日々です。
ちなみに、親にたたかれた経験が全くなかった回答者でも、自分の子どもを1回以上たたいた経験があるという結果もあるので、「親にされたから」という因果関係はないのかもしれません。
しつけと体罰の違い、定義とは?
厚生労働省のリーフレットによれば、以下はすべて「体罰」です!
・言葉で3回注意したけど言うことを聞かないので、頬を叩いた
厚生労働省「体罰等によらない子育てを広げよう!」パンフレットより
・大切なものにいたずらをしたので、長時間正座をさせた
・友達を殴ってケガをさせたので、同じように子どもを殴った
・他人のものを取ったので、お尻を叩いた
・宿題をしなかったので、夕ご飯を与えなかった
・掃除をしないので、雑巾を顔に押しつけた
ちなみに、体罰だけではなく「子どもの心を傷つける行為」も子どもの権利侵害に当たります。
・冗談のつもりで、「お前なんか生まれてこなければよかった」など、子どもの存在を否定するようなことを言った
厚生労働省「体罰等によらない子育てを広げよう!」パンフレットより
・やる気を出させるという口実で、きょうだいを引き合いにしてけなした
さて、ここでそもそもの言葉の意味もみていきたいと思います。
「しつけ」とは
①(「躾」はからだを美しく飾る意の国字)子供などに礼儀作法を教えて身につけさせること。また、身についた礼儀作法。 《躾》 「 -の厳しい家庭」 「店員の-が悪い」
weblio辞書「三省堂 大辞林 第三版」より
②本縫いを正確に、きれいにするためにあらかじめざっと縫い合わせておくこと。また、出来上がった衣服の形が崩れないように、折り目などを縫って押さえておくこと。 「 -をかける」
③作物を植え付けること。特に、田植え。 《仕付》 「 -休み」
「躾」の漢字ってすごいですよね!身を美しく!
辞書の意味から分かるのは、「しつけ」とは「子どもが礼儀作法を身につけること」です。
「礼儀作法」とは、
「礼儀」は対人関係での気配りや敬意、慎みの気持ちにもとづく行動の規範である。「作法」は対人関係に限らず、礼儀にかなった一定の行動のしかたを言う。
goo辞書「デジタル大辞泉(小学館)」より
つまり、「しつけ」とは、「周りの人に対して気配りとか敬意をこめた行動ができるように教えること」、というわけですね。
それを、叩かれながらとか怒鳴られながらやるのは、確かに本末転倒…。
気持ちの良い人たちと気持ちの良い空間を作ることができる人としての行動を教えるには、「心や体を傷つける」のは逆ですもんね。
日本は「しつけ=体罰」の意識が強い?海外は体罰禁止が多い!
日本では昔から「しつけのために叩く」というのは割と当たり前にあるように感じる部分もありますよね。
昔のマンガやドラマを見ると、学校の前に木刀を持った先生が…なんていうシーンも見かけます。
「男子たるもの」というような軍的な感じでしょうか。
そんな「しつけ=体罰」な意識ですが、グローバルでみるとどうでしょう。
1979年にスウェーデンが世界で初めて体罰を禁止して以降、2020年3月現在で日本を含め59カ国が体罰を禁止しています。
各国が体罰を禁止するのは、体罰等が子どもに悪影響を与えることが考えられるからというのもありますが、子ども自体に権利があることを主張しているから、というように感じますね。
確かに、親が怒ってばかりいたら、子どもは委縮するだけじゃなく「大人は怒るものなんだ、叩くのが普通なんだ」という悪いロールモデルができあがってしまいますよね。
「児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律」とは
2019年(令和元年)6月に交付された「児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律」は、2020年(令和2年)4月1日から施行となりました。
改正法のポイントを抜粋してみましょう!
- 親などによる体罰を禁止
- 懲戒権の在り方は、施行後2年をめどに検討
※懲戒権とは、民法822条・820条より、子の利益のために、子の問題行動に対して監護教育の観点から子に懲罰手段をとることができるというもの。 - 児童相談所で子どもの一時保護などの介入と保護者支援をする職員を分ける
- 児童相談所へ弁護士・医師・保健師を配置
- 児童虐待の再発防止のための措置強化
- 児童相談所の設置促進(地理的条件、人口、交通事情等に基づき)
- 転居しても支援継続できるよう関係機関との情報共有
など
出典:児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律の公布について
「懲戒権」というワードは実は初めて知りましたが、民法では子が必要な範囲で教育のために懲罰する権利が記載されていたようですね。
そこで「しつけのため」という言葉で、子どもを虐待するケースが多くなっていたようです。
今回の改正法によって「体罰禁止」が明記されたため、「しつけのため」と言えなくなったわけです!
大人の社会でも、暴言を吐いたり叩いたりすることが当たり前に「ダメなこと」と分かっているように、子どもにも権利があります。
2016年の児童福祉法の改正により、子どもは「児童福祉の対象」から児童福祉を受ける「権利主体」となりました。
子どもには、健やかに成長・発達し、その自立が図られる権利があります。
親にはそんな子どもの成長を見守る義務がありますね☆
体罰によらない子育てを広げよう!
新型コロナウイルスの影響で、休校措置が取られたり自粛することが多く、これまで以上に子どもと一緒の時間を過ごすことも多くなりましたよね。
ストレスが溜まったり、ゆとりがないときにイライラが募ってしまうこともあります。
子どもを大事にすることはもちろんですが、まずは自分自身を大事にすることも必要です。
厚生労働省のパンフレットには、子どもとの関わりにおける具体的な工夫のポイントも紹介されています♪
情報過多な世の中ですが、取捨選択して自分も子どももゆったり過ごしていきたいですね。
■参考ページ:厚生労働省「体罰等によらない子育てのために」ページより